ルーザーヴィル感想

東京公演が無事終わったということで、感想をまとめました。

 

話の大筋としては、いじめられ見下されていたコンピューターオタクのマイケルが、女性初の宇宙飛行士を目指す転校生のホリーと恋愛に発展したり、SFオタクの親友ルーカスに裏切られたりしながらコンピューターコミュニケーションシステムの開発に成功する、といった感じ(当方本髙担なので、ルーカスの人間的成長ストーリーだと思って観劇している節はあったが)。

話の流れが分かりやすく、それぞれの人物の性格も掴みやすかったので内容が割とすんなり頭に入ってきた。

 

まず一番の感想としては、全体的に曲がキャッチーで印象に残る。基本的に歌って踊ってワイワイしてるので、特定の登場人物に深く感情移入しなければ、シンプルに楽しい2時間ちょっとだと思う。実際、初めはルーカスにかなり感情移入していたので一幕終盤から二幕中盤までかなりしんどくなりながら観ていたが、全体の流れを掴んでいくうちにそれも無くなっていき、楽しく観劇することができた。ライブ感覚で楽しんで、って言ってたのも納得。演者の声量があるのとバンドもかなり迫力があって、音を浴びてる感じがした。

 

現代の日本は“オタ活ブーム”がメディアで取り上げられていたり、企業がオタクに向けて商品を売り出したりとあまりにも“オタク文化”が大衆化しているので、主人公のマイケルをはじめとするオタク4人組が“オタク”であるという理由でいじめられ見下されていることに、初めて観劇した時は驚いた。

どっちが良い悪いとかでは無いが、現代日本はかなり“オタク”に寛容だし、むしろ(熱狂的な)オタクであることがステータス化している節があるなと感じる。

 

気になった点としては、アーチシステムのセキュリティがガバガバすぎて、そらコンピューターオタクの高校生に先越されるわ、、と思ってしまった。当時の最先端の技術を集めたPCルームのはずなのに、パスワードが一介の清掃アルバイトの手に渡っている上に社員の誰にも気付かれることなく何日間も作業ができるというのは会社としてどうなの?と思った。アーチの社員はどこで開発に取り組んでいるのだろうか?マーケティングや出版部より、セキュリティ強化に力を入れるべきではないかと思う。  

 

 ♪Brain and Looks(この見た目この頭脳)では、演者の顔が綺麗すぎてオタク側の「♪この見た目」の歌詞の意味を掴みきれなかった(とはいえ実際にオタクコミュニティにいそうな容姿の演者を出されても…なのでただの我儘である)。ホリーの履歴書が秘書プログラムに送られたのは、整った容姿だったからなのか、身体的性が女性だからなのかが自分の中ではっきりしなくて少しモヤモヤした。

ホリーに関しては劇中で容姿が優れているという描写があったけど、マイケル達オタク4人組に関しては特に容姿について触れられていなかった。“オタク”というラベリングの中にいる彼らの容姿については話題にすら上がらないのが、本当にオタクに無関心〜見下しているコミュニティなんだなと感じた。また、女のオタクであるホリーだけに容姿に関する描写があるのは、女性はどんなラベルであっても容姿をジャッジされる、ということ?と感じた。(余談、マイケルが「♪誰も僕を見てない」って歌ってるときが1番客席が双眼鏡構えてたのが愉快だった)

 

  “「好き」が世界を変える―”というキャッチコピーは、コンピューターオタクのマイケルのコンピューターを「好き」な気持ちが世界(World)の常識を変える、というのが真っ直ぐな受け取り方だと思う。それとは別に、ルーカスのマイケルやホリーを「好き」な気持ちが、彼らにとっての世界(コミュニティでの関係性)を変える、という捉え方もできるのかな、とぼんやり思った。学生にとっては自分が所属しているコミュニティが世界の全てのような感覚が大きいと思うので、ルーカスがマイケルの告白を成功させるための手助けに奔走したり、自分の存在を蔑ろにされていると感じて自暴自棄になってしまったりと、物語の展開に大きく関わる人物になったのではないか。

人が何かを「好き」だと思う感情には大きなエネルギーが付随するので、誰かの「好き」を軽く扱うことはしないようにしようと肝に銘じた。